日々是離婚協議書作成相談「夫の告白」実務Ver14
日々是離婚協議書作成相談「夫の告白」実務Ver14
13時から予約していた(N)です。
お待ちしていました。事務所の場所は分かりましたか?
昔と違ってスマホがあればすんなり来れますからね。
飲み物はコーヒーでいいですか?
では、始めましょうか。
どうされましたか。
【問】
二人の話し合いで決着はついています。
ですから今日は離婚協議書の作成から、それを公正証書にすることをお願いしたくて参りました。
実は2年ほど前から彼には愛人がいたそうです。
突きとめたわけではありません。
彼が勝手に告白してきました。
実は本気で付き合っている人がいると。
浮気ではなかったのです。
本気だったのです。
彼がその方のことを詳しく言い出しそうになった時に耳を塞ぎましたが、「聞いてくれ」と彼は続けました。
小学校からの同級生らしいのです。
その方は。
昔から好きだったらしいのですが、その感情も私という存在に打ち消されていたそうで、忘れていたらしいです。
その方と再会し,,,,,,どういう経緯で再会したか詳しくは知らない方が身のためと思い深く聞いていません。
もう関係ないので。
「どうぞお幸せに。」
と言ってあげましたが、その言葉を発するまでの私の感情は正に「筆舌に尽くしがたい」ほどのものでした。
思い出すことのないようにこれからも注意しておかないといけない感情なので今日お話することはありません。
心の中で重い蓋をしています。
すみません。
(行)いいですよ。無理なさらなくて。
日常って急に崩壊するんだと、考えさせられました。
日常って本当に大切なんですね。
毎日同じことの繰り返しで、今日の晩ご飯は何にするかと、嫌になる日もあったのですが、そんな以前の日常が本当に大切だったんだと心底思いました。
告白後、彼はもう家に帰って来ません。
一週間もしないうちに出ていきました。
で、三日ほど前ですが彼から手紙が届きました。
これです。
長々と謝罪の言葉が続きますが、
ここです。
そう、妊娠しているんです。
その方。
だから、その人には慰謝料を請求しないでほしいと、その代わり彼が精いっぱい支払うそうです。
何ともやりきれなくなって、この気持ちをどうしたらいいのかと。
どうにもできない感情を誰にぶつけたらいいのか、ぶつけてはいけないのでしょうが。
本当にすみません。
こんなことまでしゃべってしまって。
(行)良いですよ。少なからず慣れていますから。
ありがとうございます。
【回答】
(行)大変でしたね。
突然のことで動揺もされたでしょうし、これから先のことも一気に押し寄せてきますからね。混沌としたお気持ちをどう推察していいのか、私も図りかねています。
事務的がいいのであれば事務的に進めます。
(N)そんなお気使いなく、ここに来るまでに心の整理は着けているつもりですので。
先生の普段のペースでお願いします。
(行)はい。分かりました。
では少し質問を。
お子さんは?
(N)一人、三歳の男の子がいます。
養育費って幾らぐらいが適正なのでしょうか?
(行)ご主人の年収によります。
(N)年収は通常の会社員より多いと思っています。
昨年度は1000万を少し超えていましたから。
敏腕営業マンなんだそうです。彼曰く。
(行)そうですか、ここに算定表がありますから、どうですか、この付近の金額で。
それと不動産は?
(N)はい。
私が妊娠したのが分かってから、すぐにマンションを買いました。
産まれてくる子供のために新しい環境を手に入れたかったみたいでした。
主人のご両親が大分手伝ってくれて、頭金はかなり入れています。なので毎月の支払いもそんなに高くなく、あと12年ほどで完済します。
(行)そうですか。
そのマンションは財産分与としてNさんが貰うことになるのですね。
(N)良いのでしょうか、気が引けるところもあるのですが、今の家しか住む場所もないし、実家は兄夫婦が老親と一緒に暮らしているので戻ることはできないので。
(行)今回の離婚の原因がご主人にあることを鑑みれば致し方ないのでは。
そのほうがご主人も気持ち的に楽ではないでしょうか。楽という表現は似つかわしくないかもしれませんが。
何と言えばいいか、すみません。
(N)いいえ。
あとは慰謝料と、離婚後2年は生活費を毎月10万円は振り込むと先の手紙に書いてありましたが、慰謝料の金額については触れてはいませんでした。
慰謝料って幾らにしていいのか、なんせ初めてなもので。
(行)皆さんほとんどの方が初めてですよ。
そうですね、今回は裏切り方が少し酷なので多目でもいいと思います。
5百から6百くらいですかね。(私見です)
その決めた金額を一括ですか?
(N)そんな纏まったお金は用意できないと思います。
なので分割でも構いませんが、分割のリスクはありますか?
(行)そうですね。支払いが滞る方もいらっしゃっるので一括で貰っておく方がリスクはありません。しかし、公正証書で強制執行もできますから。
(N)強制執行?
(行)はい。
財産の差し押さえです。多くの方は給与の差し押さえをされています。
一度差し押さえると自動的に毎月その部分は支払いが続きますので。
(N)そうなんですね。
まじめな人なので支払いは続くと思っています。では分割で契約します。
(行)他は?
(N)あとは年金の分割ですか、しかし婚姻期間が5年ほどしかないので、どっちでもいいのですが。
(行)そうですか。
もし分割されるのであれば、公証役場で私署証書を認証してもらうので同時にできます。
期間が少なくてもNさん固有の年金になるのでされたほうがよろしいのでは。
(N)では、お願いします。
(行)かしこまりました。
次回までに整えていただきたい書類を今から言うのでメモしてください。
印鑑証明書はそれぞれに2通づつ。
現在お住いのマンションの登記簿謄本、それと債務残高が分かるもの、毎月の支払いが表示されているものですね。
銀行から送ってくる葉書です。
後は、固定資産評価証明書又は固定資産税の確定通知書。
それぞれの年金基礎番号が分かるもの。コピーで構いません。
年金の分割には「年金分割のための情報通知書」というのが必要ですので、一度年金機構にお尋ねください。
ひとまずそのくらいを集めていただければ、登記簿謄本は私が取りに行っても構いませんが。
(N)いいえ、結構です。
何事もこれからは自分でやっていかないといけないので、やらせてください。
(行)その調子です。
今日は以上です。
【相談後】
先生に気を使わせてしまいましたね。
すみません。
でも今日で少しはふっ切れました。
ありがとうございました。
(行)いいえ、こちらこそ、かえってNさんに気を使わせたのではないかと少し反省しています。
ご主人がまじめな方というところでよく分かりました。
では、書類が整い次第ご連絡を下さい。
作成後、ご主人には事務所から委任状を送ります。
それと公証役場にも打ち合わせしておきます。
(N)はい、分かりました。
(行)では、また。
行政書士家族の問題法務事務所
Copyright (C) KAZOKUNOMONDAI Office. All Rights Reserved.