日々是離婚相談「振り返ればどこにでもある日常が自分を支えていたのか」実務Ver30
日々是離婚相談「振り返ればどこにでもある日常が自分を支えていたのか」実務Ver30
18時に予約していた(T)です。
もう年の瀬ですね。渋滞も激しかったでしょう。
どうぞこちらへ。
寒くないですか?
飲み物はコーヒーでいいですか?
では、始めましょう。
どうされました。
【問】
実は今から3カ月前ほどに妻が出ていったのです。
行き先は実家なのですが、突然すぎて唖然としました。
何の前触れもなく、ですね。
喧嘩はいつものことで取り留めて記憶に残るほどの喧嘩は最近していないのですが。
はい。
子供も一緒に。
妻は当座の衣類くらいしか持って出てはいませんが、家の中は他のものも一緒に無くなったかと見紛うくらいに閑散とした空間ができあがってます。
仕事から帰って誰もいないのが、一人なのが苦痛になりました。
食事は外で済ませていますが、そんなにお金もないし、ここひと月くらいは独身時代を思い出しながら自炊しています。
先ほど言いました一人の苦痛が一旦は和らいでいる時期です。
少し小慣れてきました。
この生活も。
ただ、この生活に慣れたくもない、早く元の生活に戻りたいのは山々なのですが、妻とはいえ相手があることですから、無理やりに連れ帰ることもできませんし。
その後、義父からは電話もらいました。
「暫く時間が欲しいと娘は言っている」と。
はい、それだけです。
「あ、そうですか」
と返すのが精いっぱいでした。
義父にいろいろ言ったところで伝わるとも思えませんし。
なんか苦手なんです。義父が。
結婚当初から私のことは嫌いみたいで。
二人っきりになると私も落ち着かないから、何か話さなければと考えてしまって、揚句、天気の話です。
暑いだの寒いだの晴れだの雨だの。
世間話すら覚束ないのは義父にも伝わっているみたいで、近頃は妻だけ帰らせることも多かったですね。
そういうところも今回の妻の家出と微妙に繋がっているのでしょうが、
どうにもできないのです。
一週間前ほどになりますが、妻が依頼した弁護士さんから
「離婚に向けて話し合いがしたいのでお住いのご住所宛に書類を郵送したいのですけど、よろしいでしょうか?」
と連絡を受けました。
そして送ってきたのがこの書類です。
妻は私と早く離婚したがっていること、それに向けて話し合いでの離婚(協議離婚)を望んでいること、もし叶わなければ離婚調停も考えていること、簡単な離婚の条件も、追って期日は連絡入れるので、直接妻に会わないこと、電話もしてはいけないこと、分からないことがあれば当職に聞くこと、この内容です。
多分来週くらいにはその弁護士さんと話し合うこととなりそうですが何と答えていいものか分からなくて今日伺った次第です。
どうかよろしくお願いします。
【回答】
そもそも何が嫌で奥様は出ていかれたのですか?
(T)
よく分からないのですが、今までの蓄積なのかもしれません。
コップに注ぎ続けた水が溢れるように限界をむかえたのかもしれません。
自分は鈍感な方で毎回私のその性格が諍いの種でした。
「ありがとう」とか感謝の言葉も気恥ずかしくて口にして言えない質で、しかし夫婦だからその部分の気持ちは十分伝わっていると思っていました。
ほんとに感謝もしているのですが言葉として表現することが全てではないだろうと。
少し捻くれているのです。
世間感覚とのズレは自分でも気づいているところです。
そうやって何年も過ごしてきましたから今更という、厄介な感情も芽生えてきました。
ただ、家族を失うことの苦しみは尋常ではありません。
その弁護士さんに押し負かされて離婚とかになれば自分は一体この先どういうふうに立ち直ればいいのかも分かりません。
できれば元に戻りたいのです。
そのためには何をすればいいのか、勿論、自分も変わらなければならないのでしょうが具体的に思いつくことはありません。
生活しながら見つけていくしかないのでしょうが。
(行)
そうですね、相手が変わることを期待しても期待外れになることが殆どですから自分から変わらなければならないでしょう。
しかし、奥様、、、
帰ってくる気はもうないみたいです。
弁護士さんに依頼して、その話合いも弁護士さんに任せる。
離婚の条件も無茶なものではなく養育費に関しても妥当なところです。
むしろ低いくらいと思います。
なぜこの条件かというと、私見ですが、早く解決させたいということでしょう。
本来は養育費は考えている金額より多く、最初は多く請求しておくことで考えている金額に落ち着きますから。
なのでTさんの収入からすればあと数万円は上乗せした金額でもいいと思います。
しかし、低い金額設定ということは「揉めたくはない、揉めないように」とのことでしょう。
慰謝料もなければ財産分与もありませんし。
それにも拘わらず弁護士さんに依頼しているということでも奥様の考えは【有利な離婚】ではなく【離婚】そのものだと推察できます。
(T)
そうですよね。
ここに来る前も自分なりに考えていたのですが、やっぱりそうですよね。
では受け入れるしかないのですか?
(行)
いや、少しは抗いましょうか。
全て家庭のことを思いながら仕事してきたTさんの想いも伝えていきましょう。
もし戻ってきてくれるのなら自分は変わる、と。
その具体例も入れながら手紙を作成しましょう。
会いには来るな、電話はするな、でも手紙に関しては何も書いてありませんから手紙は送ってもいいのでしょう。
曲解かもしれませんが他に手立てもありませんから。
(T)
はい、分かりました。
文章書くのは苦手なので先生にお願いしてもいいですか?
(行)
構いませんが、人生に一度あるかないかの手紙なので苦手と言わず書いみてはどうですか。
そうですか。
では私が書きますが、Tさんが書いたものと思わせる作業があるので来週またお時間を作ってください。
(T)
で、弁護士さんにその前に会うことになった場合は何と答えておくべきですか?
(行)
それは「離婚の意思はない」ときっぱり伝えてください。
私たちが離婚の案件で思うのは条件のすり合わせは何とかなるものです。
しかし離婚したくない人を離婚したいと思わせることはできません。
いくら弁護士さんでも人の気持ちまでは変えることは不可能です。
なので「離婚しません」と。
(T)
はい。
よく分かりました。
(行)
では来週のこの時間でいいですか?
手紙は用意しておきます。
その場でTさんに手書きして頂きますので書きやすいペンもご持参ください。
以上です。
【相談後】
これからどうしたらいいのかと心許ない時にありがとうございました。
30歳を過ぎてもこの体たらくですから愛想尽かされたのかもしれません。
ガランとした家に帰った時にいつも思うのは、妻と子供が私を支えてたんだなぁって。
だから仕事もできていたのでしょう。
「振り返れば、どこにでもある日常が自分の支えだった」とようやく気が付きました。
情けないですね。
(行)
まだ諦めてはいけません。
やり直し計画をきちんと考えてきてください。
私も諦めませんから。
応援しています。
(T)
ありがとうございます。
では来週のこの時間に伺います。
(行)
ではお気をつけて。
行政書士 家族の問題法務事務所
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