日々是離婚回避相談「夫婦関係修復のための婚姻契約書作成」実務Ver17
日々是離婚回避相談「夫婦関係修復のための婚姻契約書作成」実務Ver17
15時から予約していた(S)です。
お待ちしていました。
先ほどから雲行きが怪しいですが何とか雨は回避できそうですね。
飲み物は日本茶でよろしいですか。
では、始めましょうか。
どうされましたか。
【問】
先生は離婚をご専門にやられているのですか?
(行)そうですね。殆どが、その問題です。相続や許認可もありますが。
それが何か?
(S)いいえ、離婚を勧められたらどうしようかと思ってまして。
(行)相談者にマッチした返答をする、というのが私の相談の基本ですからご心配なく。
何なりとご相談ください。
(S)はい、分かりました。
ではよろしくお願いします。
1年ほど前ですか、主人が浮気したのをきっかけに夫婦の関係がうまくいかないようになってきました。
浮気はその1回だけだったので、私もその時は許しました。
1回だけの浮気で離婚までは考えられなかったし、子供の将来を考えても許すことしか方法が思いつかなかったのです。
結果、夫を許すことに。
暫くはその問題とどう向き合っていけばいいのかを悩み続けていました。
悩み続けている間は忘れることができないので、出した答えが「もう忘れよう」と。
しかし、テレビを見ていてもその手の話は多く取り上げられているので毎日のごとくその問題を思い出すことになってしまいます。
忘れてしまいたいのに忘れさせてくれないのです。
忘れようと努力しているのに、その努力が反作用してその時に彼から聞いた言葉の数々もその事件を鮮明に思い出させるようになって来ました。
例えば〇〇のテーマパークとか、花火大会とか、焼き肉とか、大雑把ですが「夏」すらも彼の浮気のことを連想させるワードとなってしまいました。
そんな言葉に引きずられるように、フラッシュバックしてとても毎日が耐えられなくなって、忘れたいのに忘れられないもの、一体どうしたらいいのか。
夜中に思い出して寝付けないこともしばしばです。
夫にこのことは告げていません。
もう1年も経つのに「まだかよ」となるでしょう。
「いつまで反省してうつむき加減に生活すればいいんだよ」
そんなやり取りをしたくはないので、夫には一切言わないようにしています。
ただ、思い出した時は私も塞ぎがちで、夫にもそれは伝わっていて、一緒に静かな空気の中で過ごしています。そんなとき「この人は何を考えているんだろう」と思ってしまうのです。
夫も私のことをそう思っているのでしょうが、心を覗見ることはできないし。
以前はなかった沈黙の恐怖が度々襲い掛かってきて、沈黙を打ち破るためにテレビやツイッターから話題を拾ったりと、二人の時間がなんだか落ち着かないのです。
浮気前は沈黙のことなんか考えもしなかったのですが。
そんな二人の空気感が子供にも分かるようで、いつもより大人しくしています。
それが私としても申し訳ないといいますか、我が子に負担をかけているようで。
それでも夫とは別れたくはないのです。
夫婦として添い遂げたいのです。
私の両親は離婚しています。
一人親家庭でしたから、少なからず苦労はしました。
なので、私は結婚するときに「絶対離婚はしない」と誓いを自分の中で立てています。
子供に自分のような苦労はさせたくありません。
何とか修復して前のように楽しい時間を共有できる仲良し家族三人に戻りたいのです。
それには自分自身が変わらなければならないのでしょうが、先ほど聞いていただいたような悪循環に陥ってしまっています。
このままではそれこそ離婚も考えなければならないような気もしてきて居たたまれないのです。
どうしたらいいのでしょうか。
初めてお会いして解決に繋がるヒントをお願いするのは十分厚かましいと分かってはいますが、どうかよろしくお願いします。
【回答】
毎日大変でしょう。忘れたいのに忘れられないものがあるのは。
どうしましょうか。
(S)どうしたらいいでしょうか?
(行)そうですね。
忘れられないのであれば覚えておくのはどうでしょうか。
(S)覚えていたくはないのですが。
(行)でも忘れられないのでしょう。忘れようとする行為は忘れるものを意識していないとできないので、忘れようと考えていては一生忘れることはできないと思います。
はっきり言ってもいいですか?
(S)はい。お願いします。
(行)夫の浮気を忘れるということは所詮無理です。
過去に来られた相談者の皆さん、浮気の問題で悩まれてきた方も多く相手をしてきましたが、忘れている方はお一人もいらっしゃいません。
皆さん覚えてますよ。
解決方法は向き合うということではないでしょうか。
向き合うことで真剣にこれから先のご夫婦としての姿が浮かび上がってくるのでは。
(S)確かに、浮気の当時あまりのショックにそのことを封印したくて、夫を責めずに自分の至らなさを責めていました。
ですから、その時に喧嘩になっていないのです。
夫も真剣に謝ってくれたし、1度の浮気で壊れるような夫婦でも家族でもないと、忘れてしまえば元通りの夫婦、家族に戻れるものと考えてはいたのですが。
甘かったのかもしれません。
その時もっと真剣にこの問題について二人腹を割った話し合いが出来ていたらよかったのかもしれませんね。
(行)そうです。ちゃんとその時は悪さをしたご主人を責めてあげないと。
ご主人はSさんより居たたまれなかったと思います。責められて当たり前のことをしたんですから。
それが自分より妻の方が反省していたら。
どうですか、逆のことが起こっていたら。
そう、Sさんが浮気をしてご主人が咎めもせず自分の至らなさを反省していたら。
(S)そうですね。仰っている意味がよく分かりました。
怒ってしまえばよかったのですね。
(行)今からでも怒ってやったらどうですか。そりゃないですね。
失礼しました。
だからきちんと話し合うことは重要ですよ。
夫婦関係は元々が他人ですので、相手の考えていることを知るには話し合わなければ、そこが肉親との違いです。
それに、家庭内でのルール作りもあっていいのではないでしょうか。
次なる試練は必ず来ますから。試練がない夫婦も世の中には存在しません。
試練を乗り越えてこその「仲のいい夫婦」ですよ。
その時のための危機管理として家庭内ルールを作成されては。
(S)それはどういうものでしょうか。
(行)婚姻契約です。
(S)聞いたことはあるんですけど、中身の想像はできませんが。
(行)それでは少しご説明いたします。
第1条からなる全部で10条ほどの契約です。
「お互いがお互いを尊重し、」から始まりますが、今後の夫婦関係、家族関係を纏めたものです。
家事の分担や生活費のこと、両方の親との同居の問題とか、介護の問題。子供の教育に関して等。
それに不貞行為があった時にどうするかも当然含みます。
二人ともが守らなければいけないルールです。契約書という形式をとらずとも、お二人だけの宣誓書でもいいかもしれません。
それを作るためにはご主人にもはっきりと意見を言ってもらわなければなりません。
押し付けの契約はありませんから、契約の始まりは合意からなので。
合意したことを文書に落としたものが契約ですから。
それを進めていく段階で過去の浮気のことをお互いが語りやすくなっていくのではないでしょうか。
1年経っているので少しは明るく話し合いが出来るのではないでしょうか。
唐突にではなく向き合うために、ルールを作るということです。
(S)なんか希望が湧いてくるような感じです。
そうですね、一度作ってみようかな。
私でも作れますかね?
(行)作れますよ、多分。
作ったものを見て差し上げますよ。
(S)それは悪いのでやっぱりご依頼します。
(行)そうですか、分かりました。
では今度の相談までに契約したいことをいくつか箇条書きにして持ってきてください。
それとご主人には家庭内のルールを作ることを伝えてください。
そのルールにご主人が盛り込みたいことも考えておくように、とも伝えてください。
婚姻契約書は共同作業でなければうまくいかないのでどんどんご主人とお話しください。
もしかしたら、その話し合いで契約書は作成の必要がなくなるかもしれませんから。
そんなものですよ。夫婦とは。
以上です。
【相談後】
(S)何だかもう主人を信じていこうという気持ちになって来ました。
不思議ですがそんな感じです。
誰かに聞いてもらうのが一番の処方箋だったのかもしれません。
(行)経験は積んでいますから。
相談者にマッチした答えを導くのが私の相談の基本ですから。
では来週のこの時間にもう一度来てください。
(S)はい、分かりました。
今夜は主人の好きなものでもこさえて、しっかり話し合います。
もう、待てないくらいなので必ず今夜話し合います。
(行)それは良かった。
ではまた来週。
行政書士家族の問題法務事務所
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